ちいさな村の物語
マルコの家はフィレンツェを北に30キロほど行ったところにある。
毎月最初の日曜日は、村のメインストリートにアンティークのマーケットがたつ。
といっても20軒くらいかなぁ…
広場にテントを張ったり、テーブルに並べたり、広場の階段にそのままならべたり、
小さな町には小さな町なりの小さな蚤の市。
今日はエピファニアというお祭りで、まがった鼻の、穴の開いた靴下をはいた年寄りの魔法使いがほうきに乗ってやってきて、この1年、おりこうさんだった子供にはお菓子を、いい子じゃなかった子供には消し炭を靴下の中に入れてくれるというもの。
だから、マルママが今日のために、この地方のトルッテリーニ(詰め物をしたパスタでこの町のものはジャガイモのピューレとベーコンが詰めてある)村のガストロノミアに注文してあったものを自転車で取りに行った。
今日がマーケットの日だったことを忘れていた私は、お遣いの前にしばし物色。
鋳物でできたテーブルセンターみたいな器を見つけた。
『なんでも安くしとくよ!』
自転車を手に、眺めていた私にお兄さんが感じよく言った。
『そのカゴはおいくらなの』
『10ユーロ!』
『じゃあ、お遣いが済んだらいただきに来るわ。』
それだけの会話。
私は引き取ったお盆に乗ったトルッテッリーニをひっくり返さないように注意しておうちに持って帰ったあと、再び自転車で村の広場に。
10ユーロ札を財布から取り出した私に、おにいさんが
『8ユーロって言ったよね。』
と軽くウインクしながら、2ユーロのお釣りをくれた。