サギ師登場、ブダペスト空港にて
今回はじめて、ライアンエアーを使って旅行した。格安で行けるけど、あらゆるものに別料金がかかる。チェックインカウンターで荷物を預けると15キロまで25ユーロとだとか、ボーディングパスも自分でプリントアウトして持っていかないと、エキストラのチャージがかかるし、この料金もインターネットで事前に知らせておくのと、チェックインカウンターについてから申告するのでは金額が違う。
一番安くいくのは手荷物のみで、それにもバッグの大きさや重さに条件が付いている。それらを全部クリアすると、ピサからハンガリーの首都、ブダペストまで一人、往復72ユーロだった。
せっかく格安で行くんだからこの際、一番安くいってみようと決めた。
でも慣れないと条件設定がややこしく、知らないうちに保険をかけて保険代も加算されていたり、電話連絡のサービス料を払っていたりする。事前のインターネットチェックインで私は席は事前に予約しておくもんだと思って、ドアサイドの足元の広い席を予約した。
当然、追加料金。
指定料金10ユーロ。まあいいか。
ピサ空港に行って、ゲートに並んで、初めて分かったのだけど、席をリザーブしてる人なんてほとんどいない。行って、並んで、早いもの順番にどの席に座ってもいいことになっている。だたし、リザーブ席以外。
席をリザーブしていると、普通の飛行機でプレミアムクラスの旅行者たちが先に搭乗できるのと同じように、私たちも優先で入れてもらった。ちょっとうれしい。たった10ユーロの差だったのに。(^_^)
でも席には機内誌も新聞のサービスもない。椅子だって液晶画面もついてないし、リクライニングもしない。全員直立状態をキープしたまま。飛び立ってしばらくするといつもの機内食のワゴンを準備している音が聞こえたけど、それが運ばれてくる前にアナウンスがあった。
『温かいお食事を用意しています。ピザ、6ユーロ、ハンバーガー、6ユーロ、飲み物のメニューもございます。』 ぜーんぶ自分で好きなものを注文して買うシステムのようだ。もちろんほしくなければ買わなくてもいい。
考えると当然かも。いつも無料だと思ってる飛行機のサービスは先に払っているだけなんだもんね。
旅行記はさておき、お話は出発からいきなり、帰りのブダペスト空港へ。(滞在は、真夜中に着いて3泊、実質2日間と少し。お天気よし、中身濃し、)
ライアンエアーのチェックインカウンターを探していると、男性が携帯電話を掛けながら、私たちに声をかけてきた。もちろんイタリア語。
『君たちイタリア人?13:45の飛行機でピサに行くの??』
そうだと答えると、男は携帯電話の話し相手に、10分ほどしたらかけなおすよ、と言って電話を切り、実は自分はその飛行機に乗ろうと思っていたんだけれど、コーポレートのクレジットカードを落としてしまい、手持ちのお金もないため、再度チケットを買うのに、38ユーロ貸してくれないか、さっき携帯で話していたのは事務所なんだけど、何もできないようで困っている。でもピサに着けば、空港のガレージに車も止めてあるのですぐに返せる、と言って車のカギを見せた。
マルコは『それは困ったことだろう、誰にでも起こりうることだから、38ユーロと言わず、50ユーロ貸してあげるからチケットを買って来ればいい。』と言って胸のポケットから50ユーロ札を取り出した。
マルコ!なんていいやつなんだ!でも私はそこまで素直じゃない。
『ちょっと待って、気の毒なのはわかるけど、それだったら一緒に行ってチケットを買ってあげなさい。』
男は悪びれもせず、『もちろんそれでもいいんだ!助かるよ。』
マルコと男を見送った後、やっぱりいろいろ腑に落ちない。でも本当に困っているのかも知れないし、だとしたら疑い深い私はマルコより悪い人間かな?だまされたとしても金額も少ないからどこか変なところに寄付して、困ってもいない人間に無駄に使われるよりはいいか。いや、正直に働いている人もいるんだから、ウソはよくない!いろんな考えがぐるぐる頭をめぐる。
そんなに時間もたたないうちにマルコから私の携帯に連絡がきた。
『どこにいるの?』
『さっき別れた場所で待ってるよ。』
携帯電話を持ってるマルコが見えた。
『さっきの人は??』
『カウンターまで行ったんだけど、彼の携帯に連絡が入って、会社の人がインターネットで処理したらしいよ。』
『そう、よかったね。』
でも、出発ゲートにも、機内にも、男の姿はなかった。